食事会03「出迎え」
4月1日午前0時丁度にドアがノックされた。
のぞき窓から覗くと、笑い男の覆面をしたタキシード姿の男がいた。
どうやら手紙の主が現れたらしい。
迷わずドアを開けた。
「高橋 叶音様でいらっしゃいますね?お迎えに参りました。」
笑い男はそう言うと、有無を言わさぬ態度で踵を返した。
何の準備もしていなかったので焦って呼び止めた。
「他のお客様もお迎えに参らないといけませんので、
5分だけでしたらお待ちします。」
わかりましたと返答し、最低限の衣類と財布を持ち、
ブレーカーを落とし、鍵をかけると、既に4分を過ぎていた。
笑い男は何事も無かったように歩き始めたので、
慌てて着いて行った。
アパートの入り口に黒塗りのリムジンが止まっていた。
「公正を期す為、行き先は告げられません。
またアイマスクとヘッドホンを着用して頂きますがよろしいですか?」
と低姿勢ながらも有無を言わさぬ態度で告げられた。
折角のリムジンなのだから乗り心地を体験したかったが止むを得ないし、
今更後には引けないので渋々了承した。
目も見えず音も聞こえないため、手を引かれての乗車だった。
途中何度か停車や曲がったりを繰り返したが、
信号なのか参加者を呼びに言ったのか解らなかった。
ふと気づくとアイマスクとヘッドホンを外され笑い男に起こされていた。
どうやら、単調な車のリズムと目隠しの所為で眠ってしまったらしい。
下車して見えた物は、大量のリムジンと笑い男数十人とそれ以上の人々と岩肌だった。
どこかの谷間にいるらしい。
後ろを向くとコンクリートむき出しの倉庫のような建物があった。
どうやらそこが会場らしく、数人が笑い男に先導されて行った。
頃合を見ていたのか笑い男が建物に入るように促してきた。
見るべき物も特に無さそうなので、中に入ることにした。