食事会23「無機物」
叫び声で意識を取り戻した。
とりあえずカカリを追う。
そう思った。
食堂を見渡すと、既にカカリの姿はない。
13番も同じ考えだったらしく、
食堂の扉を出たのは同時だった。
カカリの足は意外に早く、
視界に入った時には、
既に階段を西方面に曲がる所だった。
慌てて駆けつけるが、
追いついたのは西側正面扉だった。
そこでカカリと12番の死体は、
扉の中に入る所だった。
中に入ろうとした所を、
後ろから引きとめられる。
13番だった。
「中に入ると死ぬかもしれない。」
静かに冷静に一言だけ告げた。
だが、それで十分だった。
扉は閉まる事なく中の様子を伺えた。
カカリは部屋の中央を突き当たりまで進んだ。
そして、左右にある人が入れる穴に12番を入れた。
数瞬の後、白いシャッターが蓋のようにしまった。
それを確認したカカリは、
こちらを見た。
殺される。
無機物が構成する、
異様な気配に圧倒される。
13番も同じように感じているらしく、
喉が鳴る音が後ろから聞こえる。
カカリはゆっくりと、
こちらに向かってきた。
逃げたかったが、
足がすくんで動かない。
距離がじわりじわりと近づいてくる。
蛇に睨まれた蛙の気持ちを、
生きながら味わっている。
カカリが扉を出ると、
微かな空気の音と共に扉がしまった。
最早カカリは真横にいる。
生きた心地はしなかったが、
カカリはそのまま通り過ぎて行った。
全身の力が抜ける。
冷汗が湧き出す。
その場にへたり込む。
横で音がしたので、
そちらを見ると、
13番も座って放心しきっていた。
今までの人生で最高の恐怖だった。
恐らく13番も同じ気分だろう。